パナソニック コネクト株式会社 | 生成AI全社導入の実践知
ConnectAI導入3年間の定量成果
パナソニック コネクトは「禁止」ではなく「安全な代替手段の提供」でシャドーAIリスクを解消。セキュリティとイノベーションの二律背反を、組織設計で克服した日本製造業の最先端事例。
なぜ全社AI導入が必要だったか
- シャドーAI問題と3つの導入目標
どう実現したか
- 技術基盤・セキュリティ・ガバナンス
何を達成したか
- 定量成果・進化のタイムライン
何を学べるか
- 成功要因・他社比較・教訓
なぜ全社AI導入が必要だったか
「禁止」ではなく「安全な代替手段の提供」
シャドーAIを撲滅する最も効果的な方法は、公式ツールの利便性で外部AIを上回ること。
プロジェクト発足の先見性
2022年10月にプロジェクトキックオフ。ChatGPTが世に出て話題になる約1ヶ月前に開始という先手を打った判断。
3目標を明確に定義したことで、新たなAIソリューション登場時も「導入すべきか」の判断基準が明確に。結果として無駄のない推進が可能になった。
どう実現したか
「守り」のIT基盤を先に確立したからこそ、「攻め」のAI活用にアクセルを踏めた。セキュリティとイノベーションは二律背反ではなく、正しい順序の問題。
AI技術・情報セキュリティ・業務設計の専門家で構成。ConnectAIの運用方針策定からユースケース支援まで一貫して担当
AI利活用ガイドラインの策定・改訂。著作権・個人情報保護法との整合性を確保
年間60部門以上の内部監査。監査結果はCISOへ報告し、改善サイクルを回す
ガイドブック公開の戦略的意味
技術基盤(2F)やビジネスモデル(3F)の改革は、カルチャー改革(1F)という土台なしには成立しない。パナソニック コネクトはこの順序を徹底した。
何を達成したか
1回あたり28分の削減は、AIへの「聞く」から「頼む」への活用高度化を反映
マーケティング部門71%という数値は、生成AIが一部の先進ユーザーだけでなく「日常業務の一部」として完全定着していることの証左。
特化AI展開状況
汎用LLMだけでは自社固有の情報に回答できないという課題に対し、検索拡張生成(RAG)技術で社内文書を統合。
RAG対象領域の段階的拡大
Web公開情報 (3,700ページ + NR 495ページ + HP 3,200ページ)
品質管理 (社外秘: 630件 / 11,743ページ)
ITサポート・人事研修・カスタマーサポート等の全社展開
ユーザーの意図を理解し、最適なツール・情報源へ誘導
定型業務の複数ステップを自動で連続実行
非定型タスクにも柔軟に対応する自律型AI
先行試験3領域
| 領域 | 用途 |
|---|---|
| 経理 | 決裁作成支援 |
| 法務 | 下請法チェック |
| マーケティング | メール添削・分析 |
汎用チャットAI → RAG特化AI → AIエージェント → 業務AI (Autonomous) という段階的進化が、リスクを管理しながらAI活用の深度を高めている。
ConnectAI単体の12,400人から、グループ全体9万人へ。1社の成功モデルがグループ標準になるという、大企業ならではの横展開力。
何を学べるか
| 企業 | ツール名 | 展開規模 | 主要成果 | 特徴的アプローチ |
|---|---|---|---|---|
| パナソニック コネクト | ConnectAI | 12,400人 | 44.8万h/年削減 | シャドーAI対策 + 3階建て改革 |
| SMBC | SMBC-GAI | グループ全体 | 130万件RAG | 4ヶ月構築 (開発数日 + ルール3.5ヶ月) |
| 鹿島建設 | Kajima ChatAI | 2万人 | 海外14法人統合 | 禁止→代替構築の逆転劇 (3名開発) |
| 三菱UFJ | AI上司 | 4万人 | 22万h/月削減試算 | 500億円投資 (3年計画) |
| 日清食品 | NISSIN AI-chat | 全社 | 30業務で活用 | 全国8拠点からPJメンバー招集 |
パナソニック コネクトの特徴は「カルチャー改革を土台にした組織設計」。技術基盤やルール整備は他社も実施しているが、全社員の行動変容まで設計している点で一歩先を行く。
生成AI導入は「IT投資」ではなく「組織変革」。パナソニック コネクトの事例が証明するのは、テクノロジーではなく「人と組織のデザイン」が成否を分けるということ。
パナソニック コネクトのConnectAIは、「セキュリティとイノベーションの両立」が可能であることを実証した。その鍵は技術ではなく「組織設計」にある。カルチャー改革を土台に、段階的な技術深化と定量的な目標管理を組み合わせることで、12,400人規模の全社展開を情報漏洩ゼロで実現した。
[1] Panasonic Connect Press Release (2024.06) 「生成AI導入1年の実績と今後の活用構想」
[2] Panasonic Connect Press Release (2025.07) 「聞くから頼むへシフトしたAI活用で年間44.8万時間の削減を達成」
[3] Panasonic Connect (2023.06) 「ConnectAIを自社特化AIへと深化」
[4] Microsoft News Center Japan (2023.05) 「パナソニック コネクトがAIに全力投球する理由」
[5] Panasonic Connect 「生成AI利活用ガイドブック Ver.1.0」(一般公開版)
[6] Panasonic Connect (2023.02) 「Azure OpenAI Serviceを活用したAIアシスタントサービスを導入」
[7] Business Insider Japan (2024) 「パナソニック Cの生成AI導入から1年」
[8] Cloud Watch (2024) 「汎用から業務AIへ進化するパナソニック コネクトの生成AI活用」
[9] Agenda Note 「パナソニック コネクトが全社員1.3万人のAI導入に成功した3つの秘訣」
Strategic Insight Report | Based on Public Data | 2026年2月